工業簿記は2級で初めて勉強する科目ですが、そこで習うものは材料費や労務費の計算の仕方、総合原価計算の計算の仕方、CVP分析の計算の仕方といったものが多いため仕訳は軽視されがちです。
しかし、工業簿記という名前からわかる通り、工業簿記も簿記の仲間であることは間違いなく、商業簿記と同じように仕訳は非常に大切です。
また最近は、工業簿記でも仕訳を問う問題の出題が増えており、試験対策としてもきちんとやっておかなければならないものです。
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でやさしい仕訳問題をとりあげましたが、今回は仕訳のポイントのまとめ その2です。
材料・材料副費の予定配賦
問題 原料1,000円を掛けで購入した。材料の購入にさいしては、材料副費として100円を予定配賦している。材料勘定、材料副費勘定を用いて仕訳を書きなさい。
解答
(貸方) 買掛金 1,000
(貸方) 材料副費 100
解説
原料1,000円を掛けで購入した。については、原料という資産(借方)が増加し、
(貸方)
今回は「掛け」で購入したので、買掛金(貸方)も増加し、
(貸方) 買掛金 1,000
となります。
「予定配賦」については、
- 予定=あらかじめ、前もって
- 配賦=割り当てる
- 材料副費=付随費用
ということから、
「材料副費として100円を予定配賦している」
⇒「付随費用100円をあらかじめ材料に割り当てている」
と考え、100円分を材料の取得原価に加えます。
材料副費を材料に割り当てる(加算する)には材料副費の金額だけ材料を増やして、その分材料副費を減らせばよいと考えます。
材料は資産で材料副費の100円分材料を増やすので、
(貸方)
となり、同時に材料副費という費用を100円分減らすので、
費用の減少=貸方
(貸方) 材料副費 100
です。
以上をまとめると、
(貸方) 買掛金 1,000
(貸方) 材料副費 100
これが解答の仕訳です。
以前書いた【138回2級向け】わかりやすい工業簿記の仕訳ポイント~材料・材料副費の予定配賦【2級工簿】 - 日商簿記検定に絶対合格する勉強法
と内容はかぶります。
この記事の説明がわかりにくかったため、合わせて修正しました。
労務費の予定配賦
給料の支払いの部分から順を追って考えてみます。
問題 従業員への給料1,000円について、所得税の源泉徽収額100円を差し引き、手取金を当座預金口座から支払った。所得税預り金勘定を用いて仕訳しなさい。(給料の支給時の処理)。
解答
(貸方) 所得税預り金 100
(貸方) 当座預金 900
問題 当月の労務費の実際消費額を計上する。直接工の直接作業分は500円、直接工の間接作業分は200円、間接工の賃金要支給額は300円であった。仕訳を書きなさい。
解答
(借方) 製造間接費 500
(貸方) 賃金・給料 1,000
解説
- 直接工の直接作業⇒仕掛品 500円
- 直接工の間接作業⇒製造間接費 200円
- 間接工の賃金・給料⇒製造間接費 300円
賃金・給料を消費したら、貸方賃金・給料となります。
【労務費の消費・応用問題】当月の間接工による労務費の消費高を計上する。間接工について、前月賃金未払高70,000円、当月賃金支払高500,000円、当月賃金未払高100,000円であった。賃金・給料勘定を用いる。
解答
(貸方) 賃金・給料 530,000
解説
当月分については加算し、前月分を引いて求めます。
つまり、「前月賃金未払高70,000円、当月賃金支払高500,000円、当月賃金未払高100,000円」という場合、
当月賃金支払500,000円と当月賃金未払100,000円を足して、前月賃金未払70,000を引きます。
500,000円+100,000円-70,000円=530,000円
【労務費の消費・応用問題】当月の直接工による労務費の消費高を計上する。直接工について、作業時間票によれば、当月実際直接作業時間は800時間、実際間接作業時間は40時間であった。直接工の労務費の消費高の計算にあたっては、予定賃率を1,500円を用いる。
解答
(借方) 製造間接費 60,000
(貸方) 賃金・給料 1,260,000
解説
- 直接工の直接作業⇒仕掛品 1,500円/時間×800時間=1,200,000円
- 直接工の間接作業⇒製造間接費 1,500円/時間×40時間=60,000円
直接作業分の金額だけ仕掛品を増やし、間接作業分の金額だけ製造間接費を増やし、この合計分を賃金・給料から減らします。
「労務費…予定配賦」とあったら、賃金・給料を減らすから「貸方 賃金・給料」
と覚えましょう。
賃率差異の計上
まずは、労務費の予定配賦の仕訳から、
問題 直接工の直接作業時間は合計400時間、間接作業時間は合計200時間であった。直接工の消費賃金の計算には、1時間当たり1,500円の予定消費賃率を用いて計算する。賃金・給料勘定を用いること。
解答
(借方) 仕掛品 600,000
(借方) 製造間接費 300,000
(貸方) 賃金・給料 900,000
- 直接工の直接作業⇒仕掛品 1,500円/時間×400時間=600,000円
- 直接工の間接作業⇒製造間接費 1,500円/時間×200時間=300,000円
「労務費…予定配賦」とあったら、賃金・給料を減らすから「貸方 賃金・給料」
「予定は貸方」です。「貸方賃金・給料」と覚えておきましょう。
次に賃率差異計上の仕訳です。
問題 直接工の賃率差異を計上した。なお、賃金・給料の予定配賦した金額は900,000円。賃金・給料の前月未払高は400,000円、当月支払高1,100,000円、当月未払高は300,000円であった。賃金・給料勘定、原価差異勘定を用いること。
解答
(貸方) 賃金・給料 100,000
解説
前の問題で予定消費賃率によって計算された賃金・給料は900,000円でした。
これに対して、実際に発生した賃金・給料の金額は、
当月支払高1,100,000円+当月未払高300,000円-当月未払高400,000円=1,000,000円です。
予定計算された900,000円に対し、実際の金額1,000,000円の方が差額の100,000円だけ大きかったことになります。
ということは、予定計算された
(貸方) 賃金・給料 900,000
と実際発生額
(貸方)
がそれぞれ計上され、
(貸方) 賃金・給料 900,000 予定
の状態です。
ここで貸方の予定計算された賃金・給料を実際の1,000,000円にそろえるにはどうすればいいかを考えます。
⇒答えは、差額の100,000円だけ貸方 賃金・給料100,000円と仕訳すること
です。
そこで解答の仕訳は
(貸方) 賃金・給料 100,000
となります。
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