工業簿記第4問で仕訳問題が出題された場合には当講座で扱っている仕訳問題の解き方を使えば簡単に答えを出すことができます。
今回は製造間接費の処理について確認していきましょう。
製造間接費の仕訳
製造間接費は直接製品に割り当てられない費用を、いったん製造間接費に集めておこうということで計上されるものです。
製造間接費は出題のパターンがほぼ決まっているので典型的な解き方を覚えれば大丈夫です。
製造間接費の予定配賦
製造間接費はさまざまな費目からなっており、実際発生額の集計には手間がかかります。その集計作業を待っていたのでは計算が著しく遅れてしまうため、予定配賦率を使って計算が行われる場合が多いのです。
良く出題されるパターンは次のものです。
例題を使って確認していきましょう。
直接作業時間(1,000時間)を配賦基準として製造間接費を各製造指図書に予定配賦した。なお、当工場の年間の製造間接費予算は、19,800,000円、年間の予定総直接作業時間は13,200時間である。
このように年間の製造間接費予算と年間の予定総直接作業時間を使って予定配賦率を求めてから、予定配賦の金額を計算させる問題がよく出題されます。
予定配賦するということは、あらかじめ製造間接費を仕掛品に振り替えることを意味します。つまり、
予定配賦率×直接作業時間の金額だけ仕掛品を増やし、同額だけ製造間接費を減らせばよいのです。
まず年間の製造間接費予算 19,800,000円を年間の予定総直接作業時間 13,200時間で割って予定配賦率を求めます。
19,800,000円÷13,200時間=1,500円/時間
次に予定配賦率 1,500円/時間に直接作業時間 1,000時間をかけます。
1,500円/時間×1,000時間=1,500,000円
製造間接費➡費用
費用の減少(費用からの振り替え)=貸方
(借方)
(貸方) 製造間接費 1,500,000
仕掛品➡資産
資産の増加=借方
(借方) 仕掛品 1,500,000
(貸方)
この2つを合わせると
(貸方) 製造間接費 1,500,000
となり解答の仕訳となります。
「製造間接費…予定配賦」とあったら、製造間接費を減らすから「貸方 製造間接費」
と覚えておきましょう。
次の例題です。
当月の製造間接費の実際発生額は1,680,000円であったので、予定配賦額との差額を予算差異勘定と操業度差異勘定に振り替える。
「予定配賦額との差額を予算差異勘定と操業度差異勘定に振り替える」処理が問われています。
いきなりでは難しいと思うので前提条件から確認していきましょう。
製造間接費は費用です。費用のホームポジションは借方なので、製造間接費の実際発生額は借方に計上されます。
当月の製造間接費の実際発生額が1,680,000円なので製造間接費勘定の借方に16,800,000円が記入されているはずです。
したがって製造間接費勘定は
製造間接費➡費用
費用の発生=借方
(貸方)
の状態である考えられます。
次に、予定配賦額は1,500,000円なので
製造間接費➡費用
費用の減少(費用からの振り替え)=貸方
(貸方) 製造間接費 1,500,000
の状態であると考えられます。
2つを合わせると
(貸方) 製造間接費 1,500,000 予定
となります。
これを見てすぐにわかるのは、実際の金額と予定の金額を比較すると予定の方が少ないということです。
このままでは製造間接費勘定に差額が残ってしまいますが、製造間接費勘定に金額は残しておけないので、差額が残らないようにするための処理を行います。
それが問題文で問われている「予定配賦額との差額を予算差異勘定と操業度差異勘定に振り替える。」の意味です。
今、予定(貸方)の1,500,000円が実際(借方)の1,680,000円よりも180,000円少ないので、予定(貸方)の方に180,000円追加して貸借が一致するようにします。
(貸方) 製造間接費 180,000
となります。
借方が空欄のままですが、もし選択肢に原価差異勘定しかなかったら原価差異を書きます。
(貸方)
その場合の解答は
(貸方) 製造間接費 180,000
です。
ところが、本問では予算差異と操業度差異の二つを使うように指示されています。ここが少し難しいところです。
まずは差異の金額を計算をしておきましょう。
- 予算差異➡製造間接費予算と製造間接費実際発生額の差異
- 操業度差異➡基準操業度における製造間接費と実際操業度における製造間接費の差異
本問では製造間接費予算が変動費と固定費に分けられていないため、操業度によって変化しない金額を予算として使う固定予算で計算します。
予算差異=製造間接費予算(月額)-製造間接費実際発生額
=1,650,000円-1,680,000円=△30,000円(不利差異)
操業度差異=1,500円/時間×(1,000時間-1,100時間)=△150,000円(不利差異)
と求められます。
いずれも予定(予算)よりも実際の金額が多いので
➡使いすぎ➡不利差異(借方差異)
であることがわかります。
したがって
製造間接費➡費用
費用の減少(費用からの振り替え)=貸方
(貸方) 製造間接費 180,000
予算差異➡不利差異(借方差異)
予算差異勘定の借方に記入=借方
(貸方)
操業度差異➡不利差異(借方差異)
操業度差異勘定の借方に記入=借方
(貸方)
この3つを合わせると解答の仕訳となります。
(借方) 操業度差異 150,000
(貸方) 製造間接費 180,000
まとめ
- 製造間接費の貸方➡予定の金額
- 製造間接費の借方➡実際の金額
- 予定を実際に合わせる➡不足している方に製造間接費を記入する
- 相手側に指定の勘定科目(原価差異など)を記入する
- 予算差異、操業度差異の記入が求められている場合、借方差異なら借方、貸方差異なら貸方に差異勘定を記入する
この手順に従えば原価差異計上の問題も必ず解けますので、この手順をしっかり覚えておきましょう。
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